今、この記事を見ていただいている方の中で、退職を検討中という方もたくさんいるかと思います。
退職後に受け取れる給付金について、ネットで検索していると、
「失業給付金を30ヶ月受給」
「失業給付金2年6ヶ月受給」
などと紹介されている広告や動画をよく見かけます。
結論から言うと、コレは失業給付金ではありません!
今回はそんな失業給付金のウソ・ホントについてお伝えしていきます!
▼動画でもご紹介しています【労務のいろはチャンネル】
30ヶ月受給のウソ・ホント
今回、まず結論からお伝えしますと、この失業給付金30ヶ月受給というのは「ウソ」です。
ウソと言ってしまうと少し断言しすぎなところもあるんですが、この失業給付金を30ヶ月受給するというのは、かなり厳しい条件があったりとか、対象者がかなり限定されるんですね。
そもそも冒頭でもお伝えした通り、これ失業給付金ではないんですね。
だからこれはウソなんです。
ただ確かに、かなり条件は厳しいですが、退職後にある給付金を受給することは可能です。
では何がホントで、どんな給付金を受給することができるのか、その仕組みについてお伝えしていきます。
失業給付金とは
30ヶ月受給で紹介されている失業給付金は2種類あります。
まず1つ目は健康保険の給付金制度。
これはいわゆる傷病手当金のことです。
傷病手当金とは病気やケガで働けなくなった時の健康保険の給付金制度で、お勤め先で健康保険に1年以上加入していれば、退職後も受給することが可能なんですね。
これを継続給付といって、確かに失業状態のときに受給するものではあるんですが、失業給付金ではありません。
傷病手当金の受給期間は同一傷病の場合、通算して1年半(18ヶ月)となります。
なので退職前に1ヶ月、傷病手当金の受給をしていたという場合は、退職後は最長で17ヶ月受給することが可能ということになります。
ただし、傷病手当金の申請には医師の診断が必要です。
1年半もの間、働けない状態ってかなり重篤な状態ですよね。
もちろん可能性がないわけではありませんが、1年半、傷病手当金の受給をしたという方は個人的には聞いたことがありません。
それだけかなり厳しい、極一部の方でないとまず不可能なことと言えると思います。
それから2つ目は雇用保険の失業等給付。
これはいわゆる退職後にハローワークに行って手続きをする給付金ですね。
失業後にもらえる給付金と言うことで、失業手当や失業給付とよく言われますが、これは正式な名称ではなく、正式には雇用保険の失業等給付もしくは求職者給付と言います。
(今回は失業手当としてお話していきます)
失業手当を受給する条件は、
- 失業状態にあること
- 就業の意思があること
- 就業できる状態であること
なのでケガや病気でお仕事できません、といった場合は、受給することができません。
失業手当の受給資格は3つあります。
- 一般受給資格者
- 特定理由離職者
- 特定受給資格者
離職理由によりこの受給資格が決定され、この受給資格により、受給開始時期や給付日数が変わってきます。
ケガや病気が原因で働けなくなり離職した場合は、やむを得ない事情により離職した方となりますので、受給資格は特定理由離職者となり、受給に関していろいろ優遇されるんですね。
その優遇の1つが給付日数で、自己都合で退職した場合、最大でも150日とされているのが、360日にまでなるんです。
ただしこの最大給付日数の360日というのは、就職困難者(障害者)が対象となっています。
失業給付金30ヶ月受給というのは、最初にご紹介した傷病手当金の最長受給期間18ヶ月と、失業手当の最大給付日数の360日(12ヶ月)を足した期間を指していますが、30ヶ月受給するためには、まず傷病手当金を1年半受給し、更には就職困難者として失業手当を360日受給するという、かなり限定された条件を満たした方のみです。
正直、かなりムリがありますよね。
ただもちろんゼロではありませんし、30ヶ月受給はムリでも数ヶ月なら受給することは可能です。
では次に給付金の受給方法についてお話していきます。
給付金の受給方法
大事なのは、2つの給付金を受給する順番です。
結論から言うと、まずは傷病手当金を受給し、働ける状態になったら失業手当の受給をしましょう。
退職後に受給する傷病手当金については、受給の条件として、
- 退職日時点で働けないこと
- またその状態が退職後も続いていること
とされています。
なので働ける状態になった時点で、傷病手当金の受給は当然できません。
『失業給付金とは』で失業手当を受給する条件は、
- 失業状態にあること
- 就業の意思があること
- 就業できる状態であること
と説明しましたが、傷病手当金を受給しているということは、就業できる状態ではないということですから、この2つの給付金を同時に受給することはできません。
働ける状態になったら、今度は失業手当を受給するようにしましょう。
ただしここで注意事項があります。
失業手当は本来、離職日の翌日から1年間(受給期間といいます)しか受給することができません。
仮に離職日から1年間、傷病手当金を受給していた方が、その後失業手当を受給しようとしても、離職日の翌日から1年以上経過してしまうと受給することができないんですね。
そこで重要なのが、受給期間の延長申請です。
病気などの理由により就業できない状態になった場合は、受給期間を延長することが可能なんですね。
申請ができるのは離職後30日以上、就業できない状態になった場合となります。
申請条件を満たした場合は、なるべく早くハローワークに受給期間の延長申請をするようにしましょう。
まとめ
今回は退職後の失業給付金30ヶ月受給についてお伝えしました。
重要なのは受給の順番で、傷病手当金を受給し、働ける状態になったら失業手当を受給することです。
ただし、これはあくまで退職時に私傷病により働けない状態であることが条件です。
正しい知識を持って、必要なときに正しく給付金制度を活用できるようにしましょう。
コメント