ここ数年、60代、70代といった、いわゆるシニア世代でもお勤めをしているという方が増えています。
健康寿命が長くなっているというのもありますが、年金だけでは生活が苦しいというのも理由の一つではないでしょうか。
そんな私たちの生活の中で切っても切れない年金制度。
今回は2022年4月から変更となった年金に関わる制度についてお伝えしていきます。
国民年金保険料の引き下げ
国民年金保険料の見直しは毎年4月に行われていますが、令和4年度の保険料額は月額16,590円。
令和3年度の保険料額が月額16,610円でしたので、20円の引き下げとなりました。
保険料は平成29年度から平成30年度で150円引き下げられて以来、年々引き上げ傾向にあったんですが、久しぶりに引き下げられることになりましたね。
お勤め先で社会保険に加入している方は厚生年金に加入することになりますが、厚生年金は賃金額によって決定される標準報酬月額に保険料率をかけて保険料の計算がされますので、賃金額が高ければ保険料も高くなります。
一方、国民年金保険料は学生や失業中で収入がないなど、特別な事情がある場合は減額、もしくは免除されることもありますが、年収1,000万円の個人事業主であっても、年収150万円のパート・アルバイトであっても収入額に関わらず一律この金額になります。
年金(受給)額の引き下げ
納付する保険料が引き下げられましたが、年金額についても残念ながら引き下げられることになりました。
年金額は賃金や物価の変動によって毎年見直されていて、厚生労働省から公表された令和4年度の年金額は、令和3年度から0.4% の引き下げ。
金額でいうと、令和3年度の国民年金(老齢基礎年金)の年金額は65,075円(満額、1人分)でしたが、令和4年度からは64,816円(259円の引き下げ)となりました。
厚生年金については夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額として、令和3年度は220,496 円、令和4年度からは219,593円(903円の引き下げ)となっています。
その他、障害基礎年金や遺族基礎年金などについても引き下げられています。
受給開始時期の選択肢拡大
年金は原則65歳からもらえますが、65歳よりも早くもらい始めることを繰り上げ、逆に遅くもらい始めることを繰り下げといいます。
これまでは60歳から70歳の幅で年金の受給開始時期が選べましたが、今回の法改正により75歳までの繰り下げが可能となり、受給開始時期の選択肢が60歳から75歳に広がりました。
また繰り上げた場合の年金額の減額率も、繰り上げひと月当たり0.5%だったのが、0.4%となりました。
これにより例えば、65歳でもらえる年金額が月額10万円の人が、60歳から繰上げ受給をすると24%の減額となり、月額7万6000円の年金額を一生涯受け取ることになります。
逆に繰り下げた場合、繰り下げた場合の年金額の増額率は以前と同様0.7%となっているので、65歳でもらえる年金額が月額10万円の人が70歳まで繰下げ受給をすると42%の増額となり、月額14万2000円、75歳まで繰り下げると84%の増額となり、月額18万4000円の年金額を一生涯受け取ることができます。
実際には国民年金の場合、繰り上げ受給をする方が12.3%、繰り下げ受給をする方は1.5%と、繰り上げ受給をする方に対し、繰り下げ受給をする方というのはごく少数のようです。
支給停止基準額の変更
年金の受給額は企業などでお勤めをしていて、社会保険に加入しながら受給する場合、支給停止基準額、ざっくりと言うと受給している年金とお勤め先からの給料を足した金額に応じて、年金の一部、もしくは全額が支給停止になる仕組みがあります。
これまでは60歳から64歳の方の支給停止基準額は月28万円、65歳以上の方の支給停止基準額は月47万円とされていたんですね。
これまで60歳から64歳の方の場合、年金とお勤め先からの給料を足した金額が月28万円を超えると年金の一部が支給停止となって、収入が増えるにつれ年金の受給額が減額、もしくは全額支給停止になっていましたが、4月の法改正によりこの支給停止基準額が28万円から47万円に変更となりました。
65歳以上の方の支給停止基準額月47万円については変更ありませんので、65歳未満か65歳以上かという年齢の壁が取り除かれて、統一されたことになります。
年金額の在職定時改定
年金は原則65歳からもらえますが、65歳以上の方が社会保険に加入しながらお勤めをしている場合、これまでの制度では保険料を毎月納めていても、社会保険の資格喪失後しか65歳以降に納めていた保険料が反映されず、年金額がすぐに増額されるわけではなかったんですね。
それが4月の法改正により年に1回、今までの加入実績を反映して年金額が増額されるようになりました。
例えば、毎月の賃金額が20万円程の方であれば、年間13,000円程の年金額の増額となりますが、毎年9月1日に厚生年金保険の被保険者である場合は、翌月10月分の年金から改定されます。
要するに、65歳以上で社会保険に加入しながらお勤めをしている方は、毎年10月分からうけとれる年金額が増えていくことになります。
まとめ
今回は2022年4月からの年金に関わる変更について、
- 国民年金保険料の引き下げ
- 年金(受給)額の引き下げ
- 受給開始時期の選択肢拡大
- 支給停止基準額の変更
- 年金額の在職定時改定
この5つをお伝えしました。
年金は非常に複雑な制度となっています。
年金に関する相談は、
- お近くの年金事務所
- 街角の年金相談センター
- ねんきんダイヤル
- 市区町村の年金窓口
といった専門機関を利用するようにしてください。
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