社会保険とは厚生年金と健康保険を合わせたものを言います。
社会保険に加入する、と言うことは、厚生年金と健康保険に加入すると言うことです。
雇用保険も含めて社会保険と言う場合もあるんですが、特に給与計算などの労務に携わってる人は、雇用保険は別物としてとらえることが多いですが、今回は社会保険と雇用保険の違いについて解説していきます。
主な制度
それぞれの制度で代表的なものをあげると、厚生年金は将来、年金を受け取るためにかける保険です。
年齢を重ねるとお仕事を続けていくのが難しくなりますよね。
そうすると収入がなくなって生活がままならなくなりますので、お仕事をして収入があるうちに厚生年金に加入して、保険料を納めて将来に備えましょう、というのが厚生年金になります。
健康保険は病気やケガで医療機関にかかった場合、医療費の負担を減らしてもらうために加入します。
こう聞くと、「私は健康で医療機関になんてめったにかからないから、健康保険なんて加入する必要ない」と思われる方もいるかもしれませんが、健康保険は国民皆保険と言われていて、生まれたときから死ぬときまで、加入していなければならないとされています。
なので社会保険の加入要件を満たす働き方をしている場合は、お勤め先で社会保険に加入することで健康保険に加入するんですが、お勤め先を辞めた、退職した場合は、ご自身で国民健康保険に加入するか、社会保険に加入している家族の扶養になるなど、また別の健康保険に加入しなければならないんですね。
ただし社会保険の健康保険の制度には、出産手当金や傷病手当金と言った給付金制度があるんですが、この給付金制度は本人が社会保険に加入していないと利用できないので、家族の扶養になった、国民健康保険に加入した、と言う場合は、利用できなくなる制度がありますので、このへんは注意が必要です。
社会保険は厚生年金と健康保険を合わせたものと言いましたが、2つセットで加入しなければならないので、厚生年金にだけ加入する、健康保険にだけ加入する、ということは原則できません。
ただし、厚生年金の加入期間は70歳到達までとされていますので、70歳以上の方については、健康保険だけ加入する、ということになります。
それから雇用保険。
雇用保険は雇用されている労働者が加入する保険です。
なので、事業主である社長や経営に携わる役員などは、雇用されている側ではなく雇用する側なので、この雇用保険には加入できません。
雇用保険の制度で最も知られているのが、失業保険や失業手当と言われている、失業した場合の給付金制度ですね。
ただこれについては仕事を辞めて、失業状態が続いた場合に受給するものなので、仕事を辞めなければ保険に加入している意味がない!と思われるかもしれませんが、雇用保険には育児休業給付金や介護休業給付金、高年齢者雇用継続給付金と言った、お勤めを継続している方が利用できる制度もあります。
ここまでで各保険の制度についてお話してきましたが、では次に保険料について解説していきます。
保険料
みなさん毎月、給与支給日に給与明細をもらうと思いますが、フルタイムでお勤めをしている場合、控除項目に厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料といった、保険料の記載があると思います。
保険なので保険料がかかるわけですが、給与から控除(天引き)されて保険料を納める、と言うところは社会保険も雇用保険も同じです。
社会保険の保険料は、まず給与額の範囲により標準報酬月額というものが決定され、一定の条件を満たさない限りこの標準報酬月額は変わりません。
仮に社会保険取得時の給与額が24.5万円だったら、標準報酬月額は24万円となりますので、この金額に健康保険料率や厚生年金保険料率をかけて保険料が計算され、毎月同じ額の保険料を払うことになります。
なので、休職や長期欠勤などで給与の支給がなくても、保険料を払う必要があります。
2021年12月現在の厚生年金保険料率は18.3%、健康保険料率は各都道府県で違いますが、10%前後となってます。
なので標準報酬月額が24万円だったら、厚生年金保険料は43,920円、健康保険料は約24,000円となるんですが、この内の半分は会社が負担してくれるので、給与から引かれる保険料は厚生年金保険料は21,960円、健康保険料は約12,000円となります。
一方、雇用保険は毎月支給される給与額に、雇用保険料率をかけて計算され、保険料が決定します。
2021年8月現在の雇用保険料率は建設業など一部の事業を除いて9/1000(0.9%)となってますが、雇用保険料に関しても会社負担分あるので、労働者の負担は3/1000(0.3%)となっています。
なので給与額が25万円なら雇用保険料は750円、残業や休日出勤などをして給与額が27万円になったなら、810円になるというわけです。
社会保険との違いは、雇用保険は給与の支給がなければ保険料も発生しません。
被保険者の扱い
各保険の加入者を被保険者と言いますが、社会保険に関しては給与の支給がなくても保険料を納めることになるので、問題なく被保険者として扱われます。
出産手当金や傷病手当金といった給付金についても、標準報酬月額で支給額の計算がされますので、被保険者であれば給付金制度を利用することが可能です。
注意が必要なのが雇用保険。
雇用保険に関しては、ただ加入していれば被保険者として扱われるのかと言うとそうではありません。
雇用保険は労働日数が11日以上、もしくは労働時間が80時間以上の月のみ、被保険者として扱われます。
例えば週3日勤務の方は月の労働日数が12日か13日になるかと思うんですが、仮に1週間休んだ場合、月の労働日数が11日未満となり、さらに月の労働時間が80時間未満だった場合、その月は被保険者として扱われません。
雇用保険の給付金制度のほとんどは、被保険者期間が12ヶ月以上ないと利用できませんので、特に出勤日数には注意が必要となります。
また各種給付金の支給額についても、直近6ヶ月で実際に支給された給与額で計算されますので、育児休業や介護休業などの休業前に、欠勤や遅刻早退などで給与額が少なくなった場合は、給付金の支給額も少なくなりますので、こちらについても注意が必要です。
まとめ
今回は社会保険と雇用保険を比較しながら、制度や保険料についてお伝えしてきました。
特に注意が必要なのが、社会保険については、給与の支給がなくても保険料を納めなければならない、という事と、雇用保険については加入しているだけでは被保険者として扱われない、ということです。
それぞれの保険の違いについて、まずは基本的なことから知識を身に付けていくようにしてくださいね。
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