4月は新卒採用はもちろん、新しい勤務先での仕事をスタートされる方もいるのではないでしょうか。
実はこの4月、大企業においてすでに義務化されているパワハラ防止対策が、中小企業においても義務化されることになります。
ますます関心が高まっていくパワハラですが、実際には
「これってパワハラ?」
「パワハラを受けたけどどこに相談すればいいのかわからない」
なんていう方もいるのではないでしょうか。
今回はそんなパワハラを受けた時の対処法についてお伝えしていきます。
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パワハラとは
パワハラとは、パワーハラスメント。
厚生労働省のリーフレットではこのように定義づけされています。
職場内において、
- 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
- 業務の適正な範囲を超えて行われること
- 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
この全てを満たすものとされています。
もう少しかみ砕いていうと、事業主が従業員に対して、上司が部下に対して、と言った立場が上の人が、下の人に対して業務の適正範囲を超えた暴力や叱責、嫌がらせを行い、苦痛を与えたり業務ができないような状態、更には退職につながるような行為のことですね。
立場の優位性には役職や先輩後輩といった単純な上下関係だけでなく、ある特定の知識や技術を持っていて、その人の協力がなければ業務を遂行できない、といったような場合は同僚や部下といった立場であっても、優位性ありと判断されることもあります。
パワハラには大きく分けて6つあります。
身体的侵害
殴る、蹴る、突き飛ばす、物を投げつける、といった、身体への暴力による行為。
精神的侵害
言葉による侮辱、暴言、嫌味、大勢の前での叱責、長時間におよぶ叱責など、暴力ではなく暴言(言葉の暴力)による行為。
人間関係からの切り離し
無視や仲間はずれにする、イベントに参加させない、個室で仕事させるなど、周りとのコミュニケーションの機会を断って孤立させるような行為。
過大な要求
仕事能力を超えた業務の押し付け、ノルマ、残業を強要するなどの行為。
明らかな悪意を持って接してくるパターンもありますが、「期待してるよ」「君ならできるよね」など、一見悪意がなさそうに振る舞いながら、時間的、能力的にこなせない業務を押し付けると言ったパターンもあります。
過小な要求
仕事を教えない、与えないなど、仕事に対するモチベーションを低下させる行為。
仕事をさせないことで精神的苦痛をあたえ自主退社に追い込む、といったハラスメント行為ですね。
個の侵害
仕事に関係のないプライベートなことに過度に立ち入る行為。
よく言われるのが「彼氏/彼女はいるのか」「休日は何をしているのか」など、プライベートなことに口出しをする行為ですが、他にも特定の社員を監視したり、ロッカーやデスク内の私物を無断で持ち去ったり、写真に撮ったりするような行為も個の侵害にあたる可能性があります。
パワハラ防止法の内容
厚生労働省の調査によると、パワハラの中でも先ほどご紹介した6類型の中で最も多いのが精神的侵害で、約75%の方が「精神的な攻撃があった」と回答しているんですね。
パワハラが問題視されだして、さすがにわかりやすい暴力などといった身体的侵害は少なくなっていますが、その反面、精神的侵害が増えてパワハラの相談件数は年々、増加傾向にあるようです。
パワハラ対策を強化するために、この4月から施行されるパワハラ防止法、企業が講じるべき措置として具体的にどのようなものがあるのか。
社内方針の明確化と周知・啓発
事業主は、職場でどのような行為がパワハラに該当するのか、またその対策の方針を就業規則などの文書で規定し、従業員に周知・啓発しなくてはなりません。
適切に対処するための体制の整備
パワハラについて従業員が相談できる体制を整備するため、社内または社外に相談窓口を設置。
窓口の担当者が適切な対応ができる仕組みをつくる必要があります。
相談者の不利益な取り扱い禁止
パワハラについて相談をしてきた従業員に対し、企業はそのことを理由にして解雇・異動・自宅待機・減給といった不利益な取り扱いをしてはいけません。
また、パワハラの相談者のみならず加害者のプライバシーを保護するための対策も必要です。
相談後の迅速かつ適切な対応
相談後は、パワハラの事実関係を迅速かつ正確に確認。
事実が確認でき場合は被害者に対する配慮をしつつ、加害者に対する対処を行う必要があります。
事実確認ができなかった場合でも、再発防止に向けた対策をすることが義務づけられています。
これらの義務化によって、企業側にはパワハラへの対処について、今まで以上に厳しい条件が求められることになります。
パワハラを受けた時の対処法
パワハラ防止法の施行により、この4月からパワハラ相談窓口の設置が義務化されます。
まずは社内の相談窓口に相談しましょう。
中には外部の企業や弁護士事務所、社労士事務所に委託している企業もあります。
中小企業だと人事部の部長や社長自らを相談窓口としている場合もありますが、さすがに相談しづらいってことありますよね。
そういった場合は当然社外の相談窓口を利用することになるわけですが、その筆頭といえばやはり労働基準監督署(労基署)になります。
お勤め先を管轄している労基署に相談するようにしましょう。
労基署は必要に応じてお勤め先に指導や是正勧告をしますが、管轄外の地域にある企業へは働きかけることができませんのでご注意ください。
労基署に相談する際は、労働問題に関する相談窓口として総合労働相談コーナーが設けられていて、専用の電話番号があります。
「厚生労働省、総合労働相談コーナー」で検索していただいて、お勤め先の地域を管轄している労基署の相談窓口にお電話してください。
管轄している労基署がわからない、と言う方は「労基署、お勤め先の市区町村名」で検索していただくとでてきます。
その他にも日本労働組合総連合会がやっているなんでも労働相談ホットラインや、NPO法人労働組合相談センターなどでも相談を受け付けてくれます。
その他にもパワハラの相談窓口はたくさんありますが、これらの相談窓口がやってくれるのはあくまで相談に対するアドバイスです。
相談したんだから何とかしてくれるだろうと過度に期待される方がいるんですが、残念ながら実際に解決に向けて動いてくれるということは原則ありません。
法的な解決策を検討される場合は、弁護士に依頼することになります。
まずは法テラスや労働問題弁護士ナビで検索・相談することをお勧めします。
まとめ
2022年4月にパワハラ防止法が施行され、中小企業でもパワハラへの対策の明確化や相談体制の整備、パワハラがあった場合の適切な対応や再発防止などが義務化されます。
せっかく体制が整備されても、活用しなければ意味がありません。
労働者自らがパワハラに関心を持って、対処していくようにしましょう。
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