YouTubeでこれまで社会保険についての動画を何度か配信してきました。
その中で、
「ダブルワークをしたら?」
「年収が130万円を超えたら?」
など、社会保険の加入要件について非常に多くの方からご質問のコメントをいただいて、いろんな方がいろんな働き方をされているんだなと感じました。
今回はこれまでにいただいたご質問を参考に、社会保険の加入要件についてより詳しく、わかりやすくお伝えしていきます。
▼動画でもご紹介しています【いろはチャンネル】
- 社会保険の加入要件
- よくある質問
- 特定適用事業所で週20時間以上でも賃金月額88,000円未満なら加入しなくていい?
- 特定適用事業所で短期間、週の労働時間20時間以上、賃金月額88,000円以上働いたら?
- 特定適用事業所での社会保険加入条件である賃金月額88,000円には通勤費は含まれる?
- 年収130万円(106万円)以上だと社会保険に加入しなければいけない?
- 複数の事業所で合計年収130万円以上となった場合、家族の扶養から外れる?
- 失業手当を受給してますが、家族の扶養に入れる?
- ダブルワーク先で加入要件を満たす働き方をしたら?
- 本業で社会保険に加入してるけど、ダブルワーク(保険未加入)をしたら保険料は増える?
- 複数の事業所で社会保険に加入した場合、保険料はどうなる?
- 特定適用事業所における保険加入の判断基準
- まとめ
社会保険の加入要件
まずは社会保険の加入要件をおさらいしていきましょう。
社会保険の加入要件は、週の労働時間が30時間以上あること。
まずは絶対的な加入要件としてこれを押さえておいてください。
これに加えて特別ルールとして、社会保険の被保険者数が501人以上の事業所(特定適用事業所)にお勤めの場合は、
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 雇用期間が1年以上見込まれること
- 賃金月額8.8万円以上であること
- 学生ではないこと
このすべての条件に当てはまる場合は、社会保険に加入することになります。
更にこの特別ルール、2022年の10月から少し変わります。
今現在、社会保険の被保険者数501人以上の事業所が特定適用事業所となっていますが、2022年の10月からは社会保険の被保険者数101人以上の事業所が特定適用事業所となるんですね。
条件の2.雇用期間が1年以上見込まれること、についても、雇用期間が2ヶ月を超える見込みがあること、となります。
社会保険の加入対象者を増やそうという目的なわけですが、これがいわゆる社会保険の適用拡大です。
社会保険の加入要件の基本を押さえていただいて、次によくある質問について解説していきます。
よくある質問
特定適用事業所で週20時間以上でも賃金月額88,000円未満なら加入しなくていい?
答え、加入不要です。
特定適用事業所における社会保険の加入は、①社会保険の加入要件でお伝えした条件をすべて満たした場合に加入することになりますので、どれか1つでも条件を満たしていなければ、加入する必要はありません。
特定適用事業所で短期間、週の労働時間20時間以上、賃金月額88,000円以上働いたら?
答え、時期や期間によります。
現在の特定適用事業所における社会保険の加入要件は、雇用期間が1年以上見込まれることとなっていますが、2022年10月からは雇用期間が2ヶ月を超える見込みがあることとなります。
なので例えば4月から6ヶ月の有期雇用で、契約更新の可能性がある場合は、社会保険の加入が必要ですし、契約更新の可能性がないという場合は、社会保険の加入は不要です。
ただし2022年10月からは雇用期間が2ヶ月を超える見込みがある場合は社会保険に加入する必要がありますので、6ヶ月の有期雇用で、契約更新の可能性がないという場合でも社会保険の加入が必要になります。
特定適用事業所での社会保険加入条件である賃金月額88,000円には通勤費は含まれる?
答え、含まれません。
賃金月額88,000円には通勤費、残業代や休日出勤手当といった割増手当、精皆勤手当や祝い金といった臨時に支払われる手当などは含まれません。
ただし残業代については、所定外残業分(1日の法定労働時間8時間を超えた分)は含まれませんが、所定内残業分(1日の法定労働時間8時間を超えない分)は含まれますので注意が必要です。
年収130万円(106万円)以上だと社会保険に加入しなければいけない?
答え、社会保険の加入要件に年収は関係ありません。
最初にお伝えした通り、社会保険の加入要件は、週の労働時間が30時間以上あること。
お勤め先が特定適用事業所の場合は、①社会保険の加入要件でお伝えした4つの条件をすべて満たした場合で、年収は加入要件にはありません。
よく言われる年収130万円の壁は、「扶養親族の範囲は、年収130万円(60歳以上の場合は180万円)未満の親族」という、扶養に関する収入要件なんですね。
年収が130万円以上であっても、お勤め先で社会保険の加入要件を満たしていない、例えばお勤め先が特定適用事業所ではない事業所で、週の労働時間が30時間未満ということであれば、お勤め先で社会保険に加入することはできませんし、年収が130万円以上ということは親族の扶養にもなれないので、ご自身で国民健康保険と国民年金に加入しなくてはいけなくなります。
またここ最近、話題になっている年収106万円の壁。
これは特定適用事業所でお勤めしている場合の加入条件の1つである、賃金月額88,000円を年収で表したもの(88,000円✕12ヶ月)で、あくまで特定適用事業所における社会保険の加入要件の目安です。
このあたりについては、この後の③特定適用事業所における保険加入の判断基準で詳しくお話していきます。
複数の事業所で合計年収130万円以上となった場合、家族の扶養から外れる?
答え、扶養から外れます。
年収はすべての事業所から支給された給与を合算して判断します。
また年収には給与収入のほか年金収入や雑収入、最近は副業としてネットで物を売買したり、ブログなどでアフィリエイト収入を得たりする方が増えてますが、そういったものも含みます。※継続性のないものは含まれません。
ちなみに特定適用事業所での社会保険加入条件である賃金月額88,000円には通勤費や割増手当などは含まれないとお話しましたが、扶養の範囲である年収130万円には通勤費や割増手当なども含まれます。
非常にややこしいんですが、重要なポイントなので覚えておきましょう。
失業手当を受給してますが、家族の扶養に入れる?
答え、受給金額によります。
失業手当や傷病手当金を受給している場合、日額3,612円以上だと扶養に入れません。
失業手当や傷病手当金は税法上の収入には含まれませんが、社会保険上の収入には含まれます。
社会保険の加入要件は(扶養の要件も同じですが)、実際の年収ではなくこの先1年間の見込み収入(年収)で判断するんですね。
日額3,612円以上だと年収130万円の壁を超えてしまうため、扶養には入れなくなります。
ダブルワーク先で加入要件を満たす働き方をしたら?
答え、ダブルワーク先でも加入が必要です。
社会保険は加入要件を満たしたすべての事業所で加入しなければいけません。
A社とB社、2つの事業所でお勤めをしていて、いずれも特定適用事業所であった場合、A社とB社どちらの事業所でも週の労働時間20時間以上かつ賃金月額88,000円以上であるなら、両方の事業所で社会保険に加入しなければいけません。
本業で社会保険に加入してるけど、ダブルワーク(保険未加入)をしたら保険料は増える?
答え、増えません。
社会保険料は加入している事業所の賃金額でのみ計算されます。
複数の事業所で社会保険に加入した場合、保険料はどうなる?
答え、複数の事業所での賃金を合算して保険料を算出し、それぞれの事業所から控除(天引き)されます。
ダブルワークの社会保険加入に関しては、こちらの動画で詳しく説明していますので、こちらをご参考ください。
▼こちらの動画をご参考ください【いろはチャンネル】
特定適用事業所における保険加入の判断基準
今年の10月から社会保険の適用が拡大されるということで、今現在の働き方が今後どのように影響するのか、またこれからパート、アルバイトを始めようという方はどのような働き方をすればいいのか気になりますよね。
特定適用事業所における実際の判断基準は明確なものはないので、
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 雇用期間が1年以上見込まれること
- 賃金月額8.8万円以上であること
- 学生ではないこと
この条件を基に各事業所で就業規則に明記するなど基準を定めることになるので、結局のところ事業所次第なんですね。
私が以前、年金事務所に問い合わせたところ、入社時点で社会保険の加入要件を満たす雇用条件を交わした場合は、もちろん入社日からの社会保険加入になるんですが、入社日時点では社会保険の加入要件を満たしていない場合、社会保険の加入要件を満たす働き方を3ヶ月以上継続したら加入が必要と判断して差し支えない、という回答でした。
このときの年金事務所の回答をまとめると、
例えば普段、週20時間以上勤務していても賃金月額が85,000円なら特定適用事業所における社会保険の加入要件を満たしていないので、社会保険に加入する必要はありません。
では、ある月(3ヶ月)だけ忙しくてお仕事頑張っちゃいました、お給料が100,000円ありました、といった場合、年収で言うと106万円以上になってしまいますよね。
じゃあ社会保険に加入しないといけないのかというと、この場合は社会保険の加入要件を満たす常用的雇用(使用)関係が成立していないということで、加入しなくてもいいんです。
ただし、この3ヶ月が連続した3ヶ月だった場合は、一時的ではあるけど社会保険の加入要件を満たす常用的雇用(使用)関係が成立していると見なされる可能性があるんですね。
実は年金事務所というのは、毎年どこかの事業所に調査に入ってます。
社会保険に加入するべき人がきちんと加入しているのか、逆に加入するべき人じゃないのに加入してしまっていないかを調査します。
その時に社会保険に加入していないけど、加入要件を満たしていると判断された場合は、遡って社会保険に加入することになります。
このことからも年収106万円は保険加入の判断基準とはならないことがわかるかと思いますが、最初にもお伝えした通り、最終的には事業所による判断となるので、気になる方はお勤め先の総務や労務の社会保険担当者に確認するようにしてください。
まとめ
社会保険の加入要件は、週の労働時間が30時間以上あること。
お勤め先が特定適用事業所の場合は、
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 雇用期間が1年以上見込まれること
- 賃金月額8.8万円以上であること
- 学生ではないこと
このすべての条件を満たした場合、社会保険に加入しなければいけません。
特定適用事業所における実際の判断基準は各事業所で定めることになるので、お勤め先に確認するようにしましょう。
コメント