ついにあと3ヶ月あまりとなった社会保険の適用拡大。
これまでたくさんの質問をいただきました。
今回はいただいた質問を参考に基本編とダブルワーク編として特定適用事業所における社会保険加入についてお伝えしていきます。
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社会保険の加入要件
社会保険の加入要件は原則、週の労働時間が30時間以上の場合、加入することになります。
ただしお勤め先が特定適用事業所の場合は、週の労働時間が20時間以上かつ賃金月額88,000円以上で加入することになります。
特定適用事業所というのは、社会保険の被保険者数が501人以上の事業所のことで、2022年の10月からは社会保険の被保険者数が101人以上の事業所についても特定適用事業所となります。
これが社会保険の適用拡大といわれるものになります。
社会保険は加入要件を満たした全ての事業所で加入しなければいけないので、ダブルワークなど複数の事業所でお勤めをしている場合、働き方によっては複数の事業所で社会保険に加入することになるんですね。
例えばA社とB社、2つの事業所でお勤めをしていて、いずれも週の労働時間が20時間以上かつ賃金月額88,000円以上の場合、A社のみ特定適用事業所であれば、A社でのみ社会保険に加入することになりますが、A社とB社がいずれも特定適用事業所といった場合は、両方の事業所で社会保険に加入しなければいけません。
社会保険の加入要件と特定適用事業所について基本を押さえていただいて、では次によくある質問についてお伝えしていきます。
よくある質問 基本編
年収130万円以上になったら?
ご自身で国民健康保険と国民年金に加入してください。
これは社会保険の扶養の壁といわれている130万円の壁についてですね。
年収が130万円以上になったら家族の扶養に入れないということは、ご存じの方も多いかと思いますが、以前、年収が130万円以上になったら、勤務先で社会保険に加入すればいいんですよね?というご質問をいただいたんですね。
ただ事はそう単純ではないんです。
例えば週15時間、月60時間、時給2,000円であった場合、収入だけみれば月額12万円で年収は144万円。
社会保険の扶養の壁である130万円以上となります。
ただし週20時間未満の勤務なので、社会保険の加入要件を満たしていないですよね。
そうすると当然、勤務先で社会保険に加入することはできませんので、ご自身で国民健康保険と国民年金に加入することになります。
年収130万円には何が含まれる?
給与収入では基本給はもちろん、残業代、休日出勤手当といった割増手当、通勤費なども含まれますし、趣味で得た雑収入(継続性がある場合)や年金収入など、全ての収入を合算します。
特にダブルワークをしている方は複数の事業所からのお給料が合算されますので注意が必要です。
配偶者の扶養に入ってます。年収130万円以上になったら配偶者の勤務先にバレる?
バレる可能性があります。
「配偶者の勤務先に収入がバレて扶養から外された」という話をたまに聞きますが、これは配偶者が年末調整での税法上の扶養について誤った申告をした場合に起こりえます。
役所から配偶者の勤務先に、扶養親族の収入超過の再審査依頼が来ることで、バレてしまう可能性があるんですね。
後でバレて慌てないよう、収入要件はしっかり守るようにしてください。
特定適用事業所かどうかはどうしたらわかる?
事業所に直接確認してください。
特定適用事業所の条件は社会保険の被保険者数が501人以上(2022年10月からは101人以上)となっていて、従業員数ではないんですね。
従業員数は例えばホームページなどで確認することはできますが、社会保険の被保険者数となると事業所内、厳密にいうと本社の総務部といった管理部門でないとわかりません。
すでにお勤めしていれば勤務先に聞いてもらえればいいですし、これから応募しようということでしたら面接や応募する前の時点でもいいです。
全然失礼な質問とかではないので、直接事業所に聞いて確認するようにしてください。
一度でも月額88,000円以上になったら加入しなくてはいけない?
加入する必要はありません。
たまたま月額88,000円以上になっただけなら加入要件を満たしているとはいえないため、加入する必要はありません。
目安として3ヶ月以上連続して加入要件を満たした場合、加入の可能性があると言われていますが、社会保険の加入条件として事業所が独自の規程を設けている場合がありますので、詳しくはお勤め先に確認するようにしてください。
よくある質問 ダブルワーク編
メインの事業所で社会保険に加入してます。ダブルワークをしたら保険料は上がる?
上がりません。
保険料の計算は社会保険に加入している事業所の賃金額で計算されます。
ダブルワーク先で社会保険に加入しなければ、保険料に影響はありません。
複数の事業所で社会保険に加入したら保険料は?
それぞれの事業所の賃金を合算して保険料の計算がされます。
保険料はそれぞれの事業所の賃金額によって按分されますので、例えばA社の賃金が月15万円、B社の賃金が10万円、保険料が月額5万円だった場合、A社の賃金からは3万円、B社の賃金からは2万円の保険料が控除されることになります。
短期間だけダブルワークをした場合は?
加入要件を満たしていれば加入する必要があります。
特定適用事業所における加入要件の一つに雇用期間があります。
現在は雇用期間が1年以上の見込みがあること、となっていますが、2022年10月からは雇用期間が2ヶ月以上の見込みがあること、となりますので、こちらの加入要件を全て満たしていれば、たとえ短期間であってもダブルワーク先でも社会保険に加入する必要があります。
ダブルワークをしたらメインの事業所にバレる?
バレる可能性が高いです。
これは社会保険というより住民税の通知書によりバレることがあるということです。
住民税は前年の収入(厳密に言うと所得)で決定されますが、例えばメインの事業所で得ている収入以上の住民税通知書が届くことで、他に収入があることがバレる可能性があります。
実は二箇所以上の事業所で社会保険に加入されると、事業所としては届出や管理が複雑になるため嫌がる事業所もあるんですね。
仮にメインの事業所で社会保険に加入している場合、ダブルワーク先での勤務を制限するよう言われる場合もあります。
勤務先とのトラブルを避けるためにも、ダブルワークをする際はそれぞれの事業所とよく話し合いをした上で勤務条件を決めるようにしましょう。
まとめ
今回は特定適用事業所における社会保険の加入要件について、これまでにいただいたご質問に回答する形でお伝えしてきました。
社会保険の適用拡大まであと3ヶ月あまりです。
社会保険の加入要件とご自身の働き方について、今一度見直しをするようにしてください。
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